上級国民
上級国民というワードがネットを賑わせるようになってだいぶたちます。池袋の暴走事故で犠牲者を出した運転手が逮捕されないのは加害者が元官僚だからと市民は憶測を交えながらブログやツイッターでやり玉にあげています。
そんな中、上級国民/下級国民が上梓されました。著者はベストセラー『黄金の羽の拾い方』の作者橘玲氏。橘氏はデータ(事実)を提示してこの問題を解き明かします。
おもに三つのパートからなり、第1章では正規、非正規雇用の問題を扱い。データから非正規雇用の増加は30年前にくらべ相対的に増えているのは若年層男子の雇用であることを炙り出し。それは壮年、はっきり言うと団塊の世代の正規雇用を守るために若年層の正規雇用が抑制されていたことを喝破します。
非正規雇用が増えているといわれますが、データを細かく見ていくと、昔と比べ相対的に増えているのは若年層の男子の非正規雇用でそれは団塊の世代の雇用を守るために犠牲になっているというのです。
そしてその犠牲は団塊の世代が高齢者になり年金をもらう年代になるとさらに犠牲を強いられることになると続きます。
第2章では日本で実施された『SSP(階層と社会意識全国調査)の結果から現代日本人の「ポジティブ感情」を比較し』上級国民の本質に迫っています。
グループを年齢、性別、大卒・非大卒の8のグループに分けいわゆる幸福度ランキングに表すと以下の通り。
順位 性別 年齢 学歴 得点
1.女性 若年 大卒 52.07
2.男性 壮年 大卒 51.81
3.女性 壮年 大卒 51.72
4.男性 若年 大卒 50.75
5.女性 若年 非大卒 49.58
6.男性 若年 非大卒 48.81
7.女性 壮年 非大卒 48.69
8.男性 壮年 非大卒 47.94
『ここに一定の傾向があることがわかります。以下の3点にまとめられるでしょう。
①非大卒より大卒の方がポジティブ感情が高い(例外なし)
②他の要素が同じなら男性より女性の方がポジティブ感情が高い(壮年大卒男性は例外)
③他の要素が同じなら壮年より若年の方がポジティブ感情が高い(若年大卒団は例外)』
このランキングからわかることはいくつかあってそれぞれ細かく考察してあるのですが、だれの目にも明らかなことがあります。それは①非大卒より大卒の方がポジティブ感情が高いです。例外はありません。
出身大学によって格差はあるでしょうが、大卒・非大卒の間には絶対に埋まらない溝があります。実は学歴社会の日本では大卒・非大卒で上級国民・下級国民にわかれるようです。
第3章ではこの分断が世界的に進行していることを考察しています。
是非1と2章だけでも読んでいただきたい。とくに若年層(39~20)には最悪1章だけでも読んでほしい。どれだけ若年層が犠牲になっているのか、自己責任のもとに攻撃されてきたのか、事実を知っておくべきだと思います。